移住についての需要が高まっている昨今で、特に注目されているのは各都市ごとに行われている移住支援についてだと思います。
今回取り扱うトピックは、「福島県への移住に関する支援」について。
福島県といえば、喜多方ラーメンなどのグルメを始めとし、鶴ヶ城などの観光スポットが有名な都市です。
しかし、やはり皆さんの頭に浮かんでしまうことといえば、2011年に発生した「原発事故」ではないでしょうか。
来年で原発事故が発生してから10年が経過する福島県ですが、政府は原発周辺の都市を対象とした移住支援についての方針を固めました。
今回は、政府が発表した福島原発周辺都市への移住支援について詳しく触れていきましょう!
福島県の移住支援について
今回政府から発表された支援についてですが、どのような背景で考案され、どういった内容の支援なのでしょうか。
ここでは原発周辺市町村への移住支援の概要について詳しく触れていきましょう。
移住支援の背景
では、今回発表された支援の背景はどういったものなのでしょうか。
冒頭でも触れましたが、2011年の原発事故から来年で10年が経ちます。
事故発生後、今回支援の対象となる12市町村には避難指示が出され、住民は望まない移住を余儀なくされました。
解除地域の2020年4月段階での人口は約1万8000人、その内約4割が65歳以上の高齢者で占められています。
年月が経ち、避難指示が順次解除されているのにも関わらず、住民の帰還が思うように進んでいないのが現状です。
原発事故以降、解除地域の人口は「住民基本台帳登録数」の約2割ほどにとどまってしまいました。
今回支援の対象となる12市町村の復興再生のためには、避難者の帰還だけでは非常に困難です。
その中で復興庁が12月17日、地域活性化のために新たな移住者を募るべく、東京電力福島第1原発事故の被害を受けた福島県の12市町村に移住する人に対して移住支援をするという発表しました。
そのために2021年度予算案に関連事業費50億円を盛り込み、2021年度に300人程度の移住を目指すようです。
移住支援内容
続いて、支援の内容についてです。
前述した通り、原発周辺の都市へ移住した際に支援が受けられるということなのですが、具体的な支援内容はどのようなものなのでしょうか。
第一に注目したいのは、今回の移住支援が原発周辺の12市町村が対象となること。
その該当都市に移住をする場合、2021年の夏以降に最大200万円の移住支援が受けられるという内容になっています。
こちらは家族での移住、単身での移住どちらも対象となっているのも特徴です。
家族で移住した場合の支給が200万円(県内から120万円)となり、単身での移住では120万円(県内から80万円)の支給を受けることが可能です。
また、移住後5年以内に起業をすれば必要経費のうち4分の3が支給されます。
この場合の支給金額は最大400万円です。
家族で移住した場合 | 200万円(県内から120万円) |
単身で移住した場合 | 120万円(県内から80万円) |
移住後(5年以内)に起業 | 最大400万円 |
今回の方針が発表された翌日、対象の市町村への移住についての取り組みを行っている自治体に向けた交付金についても明言しています。
金額は県に対しては8億円、市町村に対しては4億円になるとのこと。
下記は、今回の支援の概要をわかりやすくまとめたものです。
- 原発周辺12市町村へ移住した場合に支援が受けられる
- 支援金は最大200万円
- 家族での移住の場合が200万円で、単身では120万円が支給される
- 移住後5年以内に企業する場合は必要経費の4分の3、最大400万円が支給される
- 自治体を対象に県へ8億円、市町村へ4億円を上限とする手当がある
- 支給は2021年夏ごろ開始予定
福島県出身で、Uターン就職を考えている方や原発のことは気になるが支援を受けられるなら移住を前向きに考える方に注目して頂きたい内容です。
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移住支給対象の市町村は?
では、実際に今回の支給内容の対象となる市町村はどの地域になるのでしょうか。
対象となるのは以下の12市町村です。
- 南相馬市
- 田村市
- 富岡町
- 浪江町
- 広野町
- 川俣町
- 楢葉町
- 双葉町
- 大熊町
- 飯舘村
- 葛尾村
- 川内村
移住のイメージが少しでもしやすくなるよう、各市町村がどのような地域なのかお話ししていきましょう。
南相馬市
福島県は浜通りに位置する南相馬市は、けやきや桜で有名な市です。
2020年10月段階での総人口は約5.3万人で、面積は398.6㎢。
南相馬市の子どもたちと「岩塚製菓株式会社」とで共同開発された、東日本大震災復興支援品のお菓子「バタしょっと」が21年度の成人式で配布されることがニュースにもなりました。
重要無形文化財にも指定されている「相馬野馬追」などのイベントや、観光スポットとして人気の「道の駅 南相馬」がある非常に活気に溢れた土地です。
田村市
中通り中部に位置する田村市は、総人口は約⒊5万人で、総面積が458.3㎢と、南相馬市よりも大きな市です。
桜やつつじを眺めることができるスポットや、鍾乳洞を探索できるスポットがあったりと、自然と多く触れ合うことができるのが田村市の魅力。
主要都市の福島駅がある位置からは若干離れていますが、落ち着いた雰囲気に住居を構えたい方にはぴったりな土地だと言えるでしょう。
富岡町
浜通りに位置する富岡町には今回の支援内容と直結する「福島第二原子力発電所」がある市です。
原発事故の影響から、郡山市内の「ビックパレットふくしま」に役場を設置していました。
現在では避難指示も解除されていますので、安心して移住を視野に入れることができます。
福島駅からは電車で約3時間の距離がありますので、通勤の不便さなどがネックになる場合があります。
ですので、移住の際にはリモートワークを前提に考えるとスムーズでしょう。
浪江町
南相馬市や富岡町と同様の浜通りに位置するのが、福島県最東端の漁港である「請戸漁港」で知られる浪江町です。
「常福寺」や「大聖寺」などの寺院が観光スポットとして挙げられているので、お寺めぐりが趣味な方におすすめの土地です。
避難指示も解除されていますので安心してください。
漁港が近いということもあって、駅からはどうしても離れてしまいます。
ですので通勤と考えると電車よりもマイカーを視野に入れたほうが良いかもしれません。
広野町
広野町も浜通りに位置する町で、双葉郡に位置しています。
人口は約4700人で、面積は約58㎢の小さな町。
登山を楽しむことができる「五社山」や「二ツ沼古戦場」などが観光スポットして挙げられます。
福島駅からもかなり遠く、求人もそこまで豊富ではありませんので、移住の際には主要都市への車通勤やリモートワークを視野に入れておきましょう。
川俣町
総人口約1万2700人の川俣町は、伊達郡に属している中通りにある町です。
観光スポットとして「道の駅 川俣シルクピア」が有名で、特産品の「川俣シャモ」をフィーチャーしたイベントなども開催されていて非常に活気があります。
福島駅へはバスで1時間かからないぐらいで通えますので、主要都市で就業しながら生活することも視野に入れやすいでしょう。
楢葉町
「岩沢麿崖仏」や「天神原遺跡」などの文化財が有名な楢葉町は、温泉などもあることから観光スポットとしても注目されています。
福島駅からは遠い双葉郡に位置する町なので、通勤といった面では多少の不便さがあります。
なので、楢葉町への移住は通勤と就業についてしっかり考えることが必須になってくるでしょう。
双葉町
双葉郡、浜通りに位置する双葉町は原発の5号機と6号機が立地している土地です。
城南信金の川本理事長が復興に関する視察を行ったことでも話題となりました。
2020年3月に、JRの常磐線が10年ぶりに運転を再開したことにより双葉駅にも注目が集まっています。
一部地域では解除されているものの、住民の避難が未だ続いている双葉町。
復興を目指して町全体を盛り上げるために、東京の制作会社が壁画を作成したことがあったりと、復興に関する話題の多い町です。
困難な状況下ではありますが、復興に向けた活性化がますます進むことが予想されますので、いずれ福島移住をと考えている方はぜひ一度双葉町について調べてみてはいかがでしょうか。
大熊町
双葉町と同じく原発が立地しているのが大熊町です。大熊町には4号機が立地しています。
2020年11月に行われた「ふくしま駅伝」で大熊町チームが敢闘賞に選ばれるなど、非常にアクティブで活気溢れる土地です。
同年3月には避難指示も解除されていますので、移住については安心して考えることができるでしょう。
飯舘村
総面積の約7割を山林が占めているほど豊かな自然に囲まれているのが飯舘村です。
「日本で最も美しい村連合」にも加盟しているほど美しい土地ですので、自然溢れる土地での生活を送りたい方にはぴったりでしょう。
避難指示も解除されていますので、安心して移住することができます。
葛尾村
浜通りに位置している葛尾村は人口約1400人ほどの小さな土地。
震災当時は村全体が避難区域に指定されていましたが、2016年には既に解除されています。
新型コロナウイルスの影響で収入が減った事業者を対象とした固定資産税の軽減などの対策も行われているので、起業についても前向きに考えやすい土地と言えるでしょう。
主要都市へのアクセスが決して良いわけではないので、起業する場合には業種や業態などについてしっかりプランを練る必要があるでしょう。
川内村
最後に紹介する川内村は、葛尾村と同様に浜通りに位置しています。
避難指示も既に解除されており、復興に向けたまちづくりを目的とした「川内村復興整備計画」が施策として立てられています。
今後復興が進み、移住先として注目される可能性のある土地ですので、福島への移住先を調べる際には川内村についての情報も仕入れておきましょう。
福島県への移住で支援を受けるための条件
支援金の金額や対象地域についてわかったところで、続いては支援を受けるために必要な条件をまとめていきましょう。
今回の支援を受けるために必要な条件は以下の通りです。
- 2011年の原発事故当時、対象の市町村に在住していなかった
- 移住後は5年以上は対象地域に住む
- 対象地域での就業をする
- 県外企業での勤務を継続する場合、リモートワークをしながら対象地域に在住する場合も可
これらの条件を満たしている場合が支援を受ける対象となります。
一般的な移住支援と比べて条件がピンポイントで設定されていますので、ご自身が対象なのかどうかは比較的わかりやすいかもしれません。
参考:読売新聞(【独自】福島に家族で移住なら200万円支給…原発周辺12市町村対象に支援金)
福島県への移住支援金の財源は?
念の為頭に入れておきたいのが、今回の支援金の財源についてです。
今回の支援金には「福島再生加速化交付金」が財源として充てられます。
これは復興庁が福島県や原発周辺の12市町村に交付しているものです。
交付金の対象となるのは、移住保進策として2020年6月に成立した「改正福島復興再生特別措置法」という施策。
この中で自民党、公明党が同年9月に提言していた支援金創設が関連してくるということになります。
今回の方針に対する様々な意見
発表からまだ時間が経っていないにも関わらず、ネット上を中心に早くも様々な意見が飛び交っていますので、いくつか紹介しましょう。
主に以下のような内容の意見が上がっています。
- 生活を建て直すには金額が足りない
- 豪雨の被害を受けた熊本などにも支援が必要
- 避難ではなく、被災地に留まっている方を対象にした方が良いのでは?
- 移住先に仕事がないと厳しい
- 原発がある双葉郡を中心に仕事を増やして欲しい
- 既に安全については言及しているのにこういった政策が出ると結局マイナスイメージになるのでは?
- 既に他県に移った避難民は対象にならないのか?
やはり、あまり前向きな言葉は見受けられませんでしたが、個人としての意見がほとんどになります。
あくまで今回の政策に対しての第一印象がどうなっているのか?という観点でご覧いただければと思います。
まとめ
今回は政府が発表した原発周辺12市町村への移住支援について触れていきました。
今回の施策は家族での移住、単身での移住どちらも対象となるだけでなく、移住後の起業などもサポートされる内容となっています。
コロナウイルスの影響で需要が高まっているリモートワークについても寛容なので、ご自身に合った働き方を探している方も注目できる支援なのかもしれません。
興味がある方は対象の市町村の特徴なども押さえた上で、今回の記事を福島県へ移住するきっかけにしてみてはいかがでしょうか。